白内障手術を10倍安全に受ける方法

目次

第1章 白内障の基礎知識
第2章 白内障手術の基礎知識
第3章 第5世代の超音波白内障手術
第4章 合併症とその治療
第5章 白内障と緑内障、糖尿病網膜症
第6章 眼内レンズ
第7章 病院選びのポイント

はじめに

 白内障は加齢とともに水晶体が濁り発症する病気です。高齢化社会になって、白内障の 患者さんが増え、多くの医療機関で手術を受けることが可能となりました。しかし、その治療について正しい知識を持っている人は少ないと思います。

 ほとんどの患者さんは白内障の手術は安全で、合併症の頻度が少なく、術後は良好な視 機能を回復できると考えていると思います。また、白内障手術を行う医師の多くも、白内 障手術は、それほど難易度が高くない手術だと考えているのではないでしょうか。しかし、この認識は、約30年間、2万数千例の白内障手術に携わってきた私の認識とは全く違います。 眼球に白内障以外の異常がなく、手術中に眼球運動が制御され、頭部が適切に固定された状況で、眼内組織の脆弱性がなければ、ほぼ100%安全に手術は可能です。しかし、 高齢者の中には、手術中に眼球運動を制御できない方や頭部も動かしてしまう方がたくさんいます。術前検査では検出できなかった水晶体を支える繊維や水晶体の外側の膜の脆弱 性がある場合、技術、経験がなければ合併症を起こしてしまいます。従って、すべての白 内障手術は危険性を孕んでいるのです。

 難治性の白内障の場合は、当然合併症の頻度は上がり、合併症も深刻で視力回復が難しくなります。そのため、難治性の白内障の手術を行う医師は非常に少なく、患者さんの多く は手術を受けられない状況か、手術を勧めてくれる医師を探すのに苦労していることと思います。

 白内障手術で最も重要なことは、安全な手術を行い、合併症を最小限に抑えることだと 私は考えていますが、現在の白内障手術は安全性よりも、多焦点眼内レンズなどを用いる屈折矯正を重視した手術が広がっています。屈折矯正の治療は、白内障手術に限らず、国が保険診療を認めていません。つまり、近視、遠視、乱視や老眼は治療を要する病気ではないと現在国は考えているのです。現時点では美容整形と同じ扱いであり、妥当な判断だと思います。

 今回、本書を書こうと思ったのは、白内障について正しく理解することで、白内障手術の危険性を認識していただいて、患者さんに安全な手術を受けて欲しいと思ったからです。白内障の手術は、この約30年間の間に劇的に進歩しました。多くの医師やメーカーが協力して、新しい手術法や器具を開発してきた結果です。

 私も、エイトチョップ法という効率的で安全性が高く、患者さんへの負担が少ない手術 法を開発し、さらに器具を改良して水晶体核の硬い患者さんや、様々な理由で手術困難な 場合でも手術を可能にするランスチョップ法も開発しました。

 これらの手術法によって、通常の白内障手術は約 分で行うことができるようになり、他の病院で手術が不可能と断られた難治性の白内障手術でも良い治療成績を収めています。

 本書では、この術式についても紹介しています。安全な白内障手術を受けて快適な生活をするために、本書を役立てていただければ幸いです。