サトウ眼科クリニック

白内障手術について

白内障手術は、決して100%安全な手術ではありません。
手術を受ける前に患者さんに是非知っておいて頂きたいことを説明致します。

▼動画にて白内障手術の説明をご覧いただけます▼

目の構造

 最初に目の構造について説明致します。眼球の前方には、黒目(角膜)がありその後ろには透明な水(前房水)と虹彩(瞳孔を形成する)があります。
 その後ろに水晶体があります。水晶体はその外側が非常に薄い透明な膜(水晶体嚢と呼ばれ、前方の部分を前嚢、後ろを後嚢と呼びます)でできており、その中に透明な蛋白質が入っています。
 水晶体は虹彩の後ろで無数の糸(チン氏帯)により眼内に宙吊りにされています。
 水晶体の後ろには、硝子体という透明な卵の白身のようなものがあり眼球を満たしています。硝子体の後ろには、網膜という神経と血管の膜があります。

白内障の原因

 白内障は、1)老化、2)糖尿病、3)紫外線、4)その他(外傷、炎症、先天性、手術後)などの原因で水晶体嚢の中の蛋白質が濁ることによって発症します。
多くの患者さんの場合、その原因は老化か糖尿病がほとんどを占めますので、白内障は進行性の病気です。
特に糖尿病を持つ人は正常の人に比べ白内障に罹る確立が高く、進行も速い傾向があります。

白内障の治療

白内障の治療には薬物による点眼治療と手術治療がありますが、点眼薬の効果を調べた厚生労働省の研究報告では、その治療効果が否定されております。以前の白内障手術は安全性も低く、視力回復まで時間がかかったので、手術よりは危険性のない点眼治療で様子をみることもありました。しかし、最新の手術法を用いれば短時間の手術で安全に視力を回復することが可能となりましたので、当院では点眼治療はせず、患者さんから十分な理解が得られ、手術の要望があれば手術治療を行っております。

白内障手術

 白内障手術は、日帰りで行っております。手術を受ける約2時間前から瞳を開く目薬をつけて、前方から水晶体を広く見えるような状態にします。さらに手術室に入る直前に麻酔薬を点眼します。手術室に入ったら、椅子に掛けて頂きます。この椅子は自動的に横になって手術用のベッドになります。その後、消毒液で目の表面を消毒します。消毒が済むと清潔な布が顔に被さり、瞼を大きく開く器械が置かれ、顕微鏡で目を観察しながら手術が開始されます。まず、眼球に小さい傷を作ります。この傷から目の中に特殊な器械を入れ、水晶体の前嚢という部分を取り除き、水晶体の濁った蛋白が露出した状態にします。次に超音波白内障手術装置の先端部分を目の中に入れ濁った蛋白を細かく砕きながら吸引除去します。眼内レンズはアクリルという折り曲げることが可能なレンズをまるく折り畳んで目の中に入れ、眼内で開きます。所要時間は平均して3-4分ですが、目の違いによって多少時間が長くかかることもあります。手術が終了したら眼帯をして、少し休んでから帰宅して頂きます。

眼帯は翌日には取ることができます。眼帯を取ったら目薬を2種類、1日4回を約1週間、その後は、目薬を変更して、一日3回で、さらに3週間つけて頂きます。手術を受けてから特に1週間は目を擦ったり、押さえたりしないでください。非常に小さい手術の傷ですが開いてしまうこともありますので、不潔にしないように注意してください。

 手術後は、眼鏡を掛けなくても日常生活に困ることはほとんどありませんが、新聞を読んだりする場合は近用の眼鏡が必要になります。また。遠くの小さい文字を読んだり、車の運転をしたりする場合には眼鏡が必要になる場合もあります。眼鏡は手術を受けてから3-4週間して目の傷が安定して、視力の変動が無くなった時期に検査をして患者さんの目に合った眼鏡の処方せんをお作りします。

白内障手術の安全性とその合併症

 白内障手術の成功率は、約99.7%です。ほとんどの患者さんは1回の手術で視力回復が可能ですが、約0.3%の患者さんは軽度から重度の合併症を起こす可能性があります。また、水晶体核が固い場合、散瞳不良や角膜混濁など状態が悪い場合は、その分、手術の成功率が下がります。

白内障手術における合併症について説明致します。

術後眼内炎

 発生頻度は3000人から5000人に一人の割合だと一般的に言われております。

 この合併症では手術中あるいは術後に、傷から目の中に細菌が入り眼内で強い炎症を起こします。手術前には、十分に目の表面を消毒しますが、白内障手術で使用する消毒液は、あまり強い消毒液を使うことができません。目の表面、特に黒目の表面は皮膚の表面とは違い生きた細胞が並んでいます。この細胞は通常の消毒液で消毒すると死んでしまい、黒目が白く濁ってしまいます。そのために弱い消毒液を使わなくてはなりませんが、その分消毒の効果が落ちて細菌を完全に殺すことができず、術後眼内炎が発生することがあります。術後眼内炎が起きた場合はすぐに硝子体手術という手術で目の中の細菌を完全に取り除き、抗生物質で洗浄することが必要です。

 治療が遅れると失明の可能性があります。また、細菌に耐性があると抗生物質が効かず、治療効果が得られずに失明する場合もあります。当院では、手術前に抗生物質を投与することは、耐性菌出現の危険性を考えて行っておりません。

 硝子体手術は主に糖尿病網膜症に対して行われる非常に難しい手術で、糖尿病網膜症の専門医がいない病院では行うことができません。

 多くの白内障手術をする病院では硝子体手術ができる専門医が常勤していないため、大学病院などに転院する必要があり、手術が遅れてしまう可能性があります。その点、当院では術後眼内炎が起きた場合にも迅速な治療が可能ですので安心して白内障手術を受けることができます。

後嚢破損による硝子体脱出

 頻度は病院や執刀医によって違いますが、当院では300人から600人に一人の割合です。軽症の合併症ですが、適切な処置をしないと術後に網膜剥離を起こしたり、眼内レンズが傾いたりしてしまうことがあります。

 慎重に脱出した硝子体を切除する必要がありますので、手術時間が余計に30分以上かかる可能性があります。

 後嚢が破損する原因は、特に高齢の患者さんで目の組織が老化によって脆くなっている場合がほとんどですが、執刀医の経験が未熟な場合に正常の後嚢でも破損する場合があります。当院での後嚢破損の発生頻度は学会などで報告されている頻度と比べて極めて低い頻度です。

チン氏帯断裂により眼内レンズが移植できない

 頻度は術前に予測できる患者さんを除いて、当院では1300人に1人ぐらいの頻度ですが、病院により発生頻度にばらつきがあり、やはり手術操作を丁寧に行う執刀医による発生頻度は低くなると考えられます。

 この合併症が起きた場合は、初回手術では眼内レンズは移植できませんが、術後3-4週間経過して目の炎症が完全に消失した時期を選んで2回目の手術を行います。2回目の手術は、眼内レンズを支持する2本の足を直接、眼球の壁に縫い付ける手術です。当院では手術の傷が小さく済むように新型のアクリルの眼内レンズを用いており、縫合に用いた糸が目の表面に出て来ないように眼内に糸を埋め込んで手術を行っております。

 従って、術後に異物感や痛みを訴えることはありません。2回目の手術が無事終了すれば、後遺症をほとんど残さずに視力を回復することができます。

水晶体核の落下

水晶体核を超音波乳化吸引中に水晶体の後嚢を破損して大きな亀裂が生じたり、チン氏帯断裂が生じて水晶体の支えがなくなると水晶体核が網膜上に落下する場合があります、この合併症の頻度は3000人から4000人に1人ぐらいですが、数日中に硝子体手術を行って落下した水晶体核を除去する必要があります。また、同時に眼内レンズの挿入あるいは縫着を行います。

眼内レンズの交換

強度の近視や遠視のある眼は眼球の前後方向の長さが極端に長かったり、短かったりするので眼球の長さ(眼軸長)の測定に誤差が出て、眼内レンズ挿入後に強い近視や遠視になったりする場合があります。眼鏡での矯正が不可能な場合は手術後1週間以内に眼内レンズの交換を行います。1週間以内であれば、簡単に交換が可能です。

黄斑浮腫

手術は何の問題もなく終了しても、術後の軽微な眼内炎症により、眼球の後ろにある網膜の中心部の黄斑に浮腫が生じて視力低下を起こす場合があります。ほとんど場合、視力低下は軽微ですので問題ありませんが、稀に重症化して治療が必要になる場合もあります。重症化した場合は視力回復まで時間が1-2ヶ月ほどかかる場合もあります。

後発白内障

手術後数ヶ月から数年して、眼内レンズを入れるために残した水晶体の後ろの膜自体が濁る病気ですが、白内障手術を受けた患者さんの内、約5-10%の方に発症すると言われています。数分のレーザー治療を行えば、翌日から視力は回復します。

飛蚊症

手術の翌日から3-4か月、視野に黒い点、虫のようなものが見えることがあります。手術による炎症や硝子体の変化によるものですが、時間経過とともに少なくなります。しかし、まれに網膜剥離という重大な病気が手術によって、誘発されている場合があります。手術後、初めて飛蚊症が生じた場合、一度検査して異常がなくても飛蚊症が明らかに増えた場合には、必ず眼底検査を受けてください。眼底検査で異常がなく、飛蚊症が悪化しなければ心配ありません。

白内障手術を受けるかどうか

白内障手術は比較的安全で負担の少ない手術ですが、決して成功率は100%ではありません。また、他の病気の影響や手術の影響で視力回復が良好でない方もいます。医師は病気、手術について、説明や助言はしますが、手術を受けるかどうかは、最終的にご本人が自分の責任のもとに決断してください。過熟白内障を除いて、早急に手術が必要になることはありません。

病院や執刀医による白内障手術の違い

白内障手術はどこの病院でも同じような方法で行われ、安全性、視力回復の良し悪し、合併症の頻度に違いがないと考えている患者さんがたくさんいると思いますが、残念ながらそれは正しくありません。今や大学病院でも一般の病院、眼科医院でも使用される手術装置に大きな違いはありませんが、手術の方法、執刀医の経験や手術技術は大きく違います。従って、合併症の頻度に何倍もの開きがあます。合併症が起きた場合、視力が回復するどころか最悪の場合は失明することさえあります。私は、過去11年間に10,000人を超える患者さんに対して白内障手術を行っております。また、プレチョップ法という手術方法を独自に進化させた、8分割プレチョップ法を用いて、安全性の高い効率的な最先端の手術を行っております。

白内障手術を受ける病院選び

手術を受ける前に、担当医の技術がどれくらいであるか知ることは非常に重要です。そのためには、担当医が年間どれくらいの白内障手術をしているか、手術時間はどれくらいか、どんな種類の眼内レンズを移植するのか、合併症の頻度はどれくらいなのか尋ねてください。これらの質問に答えられない医師に手術を任せるのは避けるべきです。

良い手術をより多くの患者さんに

当院で白内障手術を受けられて、手術に満足して頂けましたら、是非、サトウ眼科クリニックでは安心して白内障手術が受けられると近所の人や友人、親戚の方に知らせてください。医師一人では限界がありますが、多くの患者さんの力で良い医療を広めることは可能であると信じております。