サトウ眼科クリニック

硝子体内注射

糖尿病黄斑浮腫、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症(網膜中心静脈閉塞症・網膜静脈分枝閉塞症)による新生血管の増殖や黄斑浮腫に対して、ルセンティスやアイリーア(抗血管内皮細胞増殖因子抗体)を硝子体内に注射する治療を行っています。治療は硝子体専門医が手術室で行っているため極めて安全です。

糖尿病黄斑浮腫

病態

糖尿病の悪い状態が続くと、網膜血管の循環が悪くなり、初期には網膜出血、網膜浮腫が発生します。網膜の中心を黄斑と呼び、網膜の中心部の浮腫を黄斑浮腫と言います。黄斑浮腫が発生すると視力は著しく低下します。浮腫は、網膜血管の血管透過性が亢進して起きます。これは、血液循環が悪化し、眼内で血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が異常に増加することが原因と考えられています。

正常網膜とその断層写真
糖尿病黄斑浮腫とその断層写真

治療

(1)1か月間隔で4回のルセンティス(抗血管内皮細胞増殖因子抗体)の硝子体内注射を行います。
(2)その後、病変の状態を観察して網膜浮腫が消失するまでルセンティスの硝子体内注射を続けます。
(3)網膜の浮腫が消失したのを確認してから網膜光凝固を行います。
(4)網膜光凝固を追加した後にも網膜浮腫が再発する場合はルセンティスの硝子体内注射を続けます。

加齢黄斑変性

病態

加齢黄斑変性は、網膜の外側の脈絡膜に異常な新生血管は発生して起きる老化による病気です。脈絡膜に発生した新生血管は、その内側の網膜色素上皮を超えて網膜の下で増殖したり、さらには網膜内で増殖したりします。新生血管から、血液の漿液がもれたり、出血したりして網膜の構造、機能を障害します。

加齢黄斑変性その断層写真

治療

(1)1か月間隔で3回のルセンティス(抗血管内皮細胞増殖因子抗体)の硝子体内注射を行います。
(2)その後、病変の状態を観察し、必要な場合にルセンティスの硝子体内注射を1回づつ追加します。
(3)効果がない場合は、ルセンティスを別の抗血管内皮細胞増殖因子抗体のアイリーアに変更して硝子体内注射を行います。
(4)薬剤を変更しても効果がない場合は、入院での特殊なレーザー治療が必要となりますので専門医に紹介します。

網膜血管閉塞症(網膜中心静脈閉塞症・網膜静脈分枝閉塞症)

病態

網膜血管閉塞症には、網膜全体の静脈が閉塞する網膜中心静脈閉塞症と網膜の静脈が部分的に閉塞する網膜静脈分枝閉塞症があります。どちらも、網膜静脈内の血栓形成が原因で発症します。基礎疾患として高血圧、動脈硬化が多いと言われていますが、原因不明のこともあります。網膜出血や網膜浮腫を起こして網膜の機能を障害します。

網膜中心静脈閉塞症とその断層写真
網膜静脈分枝閉塞症とその断層写真

治療

(1)1か月間隔で3回のルセンティス(抗血管内皮細胞増殖因子抗体)の硝子体内注射を行います。
(2)その後、病変の状態を観察して網膜浮腫が消失するまでルセンティスの硝子体内注射を続けます。
(3)網膜の浮腫が消失したのを確認してから網膜光凝固を行います。
(4)網膜光凝固を追加した後にも網膜浮腫が再発する場合はルセンティスの硝子体内注射を続けます。

視力回復

治療しても、視力があまり改善しない場合もあります。視力回復は治療後に網膜の中心部(黄斑)の機能がどれだけ回復するかによります。網膜血管閉塞症が発症してから、治るまでに網膜の視細胞が障害されていると完全に機能は回復せず、視力も正常化しません。しかし、ほとんどの場合、治療が成功すれば、視力をある程度改善させることが可能です。放置すれば、ほぼ確実に悪化します。