高齢化社会と言われて久しい日本ですが、当院に通う患者さんも半数以上が高齢期の方々です。特に白内障・緑内障は老化現象が起因しているため、高齢期の患者さんが増えるのは必然と言えます。
日本老年学会では、65~74歳を准高齢者、75~89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者と提言しています。
当院で白内障手術を受ける患者さんは70~80代が中心ですが、最近は超高齢者枠の患者さんも増えてきています。
2024年の白内障手術を施行した650件の内、14件は90歳以上であり最高齢者は97歳でした。(過去当院で白内障手術を受けた最高齢者は100歳!です。)
今年に入って既に超高齢者の白内障手術は6件施行しています。
当院に通院されている患者さんの事例です。
90代でひとり暮らしのAさん。様子を見に来たご家族が視力が低下している事を心配し、当院に受診されました。
視力検査をしたところ、矯正視力0.2(裸眼視力0.05)まで落ちていました。眼鏡をかけていなければ手探りの状態で生活をしてた事になります。来院された時もご家族に手をつないでもらって移動されていました。
はじめは他の眼科を受診されましたが、高齢を理由に手術は勧められなかったたそうです。ですがこのまま治療しなければ益々視力が低下し日常生活が困難になると思い、ご家族が調べて当院にたどりつかれました。
なぜここまで視力が下がっているのに、眼科を受診されなかったのか?
多くの方が「高齢だし視力が下がるのは当たり前だと思った」「通院するのが大変」「今さら手術しても…」と答え治療をあきらめていました。特にひとり暮らしの高齢者は我慢してしまい、ご家族が気がついた時には白内障が非常に進行している場合が多いです。
90歳以上の白内障患者は、水晶体核の硬度が4~5度(1~5段階で数字が大きいほど硬い)、成熟白内障、チン氏帯が弱い、ベストポジションで手術をうけれない(目や顔を動かしてしまう、腰痛や身体の変形で仰臥位になれない)、認知力の低下などが重なり、手術の難易度が上がってしまいます。
Aさんを診察すると水晶体核の硬度は両眼とも4度ととても硬い状態で、難しい手術になることが予想されました。こういった条件の場合、他院では嚢外摘出術(ECCE)や小切開白内障手術(SICS)が選択される場合は多いのですが、手術時間が30分~1時間と長くなり患者さんの負担も大きくなります。当院が実施しているエイトチョップ法は難治症例の手術も安全に行えるのが特徴です。
Aさんの手術は両眼とも12分程度で終わり、術後の視力も矯正視力0.8(裸眼視力0.5)と良好な回復をみせました。「よく見えます!うれしいです!」とAさん・ご家族に大変喜んでもらえました。今では手をつなぐことなく、ひとりで歩いて診察室に入ってこられます。
『白内障手術に年齢制限はありますか?』と質問されれば『NO!』とお答えできます。しかし年齢が重なるにつれ白内障手術のリスクは上がっていきますので、あまり我慢せずに眼科を受診され、適切な時期に手術を受けられることをおすすめします。
白内障・網膜疾患・緑内障の治療について詳しく説明しています。